インプラント治療のよくある例 その4 奥歯に複数本行うケース
上あごの奥歯を左右2本ずつ失ったことで、
とても咬みづらいのでインプラント治療を希望された方です。
上の奥歯を4本失っているので下の奥歯は実質機能していません。
咬める歯の総数は20本です。
80歳で20本歯を残しましょう!というハチマルニイマル運動(8020運動)が目標にしているのが20本です。
やはり、せめて8024ないと食物を粉砕し、消化しやすい状態まで持っていくのは難があるのではないかと思います。
この部分に歯があることで、咀嚼の回復が行えます。
また、昔の俳優さんは奥歯をわざと抜いて痩せた顔を演出したという例があるように、ほっぺたのへこみが少し現れます。
インプラント処置を4本行いました。
これで咬みやすくなって安心です。
・・・実はそうではありません。
全体に目を向けてみましょう。
下の奥歯はブリッジが入っています。
そのブリッジの柱になっている歯は、過去に歯内療法(しないりょうほう:神経や血管を取った歯)がされています。
これまでは上の歯がありませんでしたので、
強い力がかかることはありませんでしたが、
これからはインプラントという強力な歯と共同で咀嚼をしていきます。
ブリッジという状態でただでさえ負担が多いのに、
さらに相手の歯にインプラントが入るのです。
これが何を意味するか?
歯が割れる可能性が高まります。
もし、インプラントではなくて取外しの義歯であれば、
さほど咀嚼力は発揮されないので歯が割れる可能性は低いといえます。
食品によってはものすごく硬いおせんべいを食べて割る方がいらっしゃいます。
別の方の例ですがこの方は自分の奥歯をまっぷたつに割ってしまいました。
相手の歯も自分の歯です(インプラントではありません)。
状況をお伝えし、すぐにではないが少しずつ歯を失う可能性を減らすために
下の歯のない部分もインプラントにされることになりました。
7年後の現在の姿がコチラです。
さて、この方の場合、前歯が割れる可能性がまだ残っていますが、
現在のところはなにもしていません。
万が一に備えての相談はしていますが、
まだ大丈夫なようです。
今のところは安定した状態が続いています。
さて、このように過去の治療の繰り返しにより歯を失われるケースがあります。
特に50代、60代、70代の方々です。
その方々の時代は、材料や接着剤、治療技術の進歩が現在ほど進んでいませんでしたので、仕方がない部分もあるかと思います。
現在は歯をしっかりと守るための、先手を打つためのう蝕予防検査、歯周病検査及び予防、歯を維持するためのメインテナンス、歯に問題を起しかねる食事、歯ならびに影響を与える呼吸や嚥下その他の癖などがわかっています。
後手に回る治療ではなく、いかに先手を打つのかという発想がとても大切です。
ただし、オーバートリートメント(治療のし過ぎ)になってはいけませんので
しっかりとご相談の上判断していただければと思います。
ちなみにこの方の場合は、最初に上あごにインプラントが入りましたが、
その前の時点で下あごがインプラントになる可能性があることや、
前歯が問題を起す可能性があることを計画しての段取りでした。
治療後のメインテナンスの重要性もしっかりとご理解いただいているので、
今後問題が起こる可能性は低いといえます。