インプラント治療のよくある例 その6 骨の造成が必要なケース
歯は抜かない方がいいに決まっていますが、状況が悪い歯を残しすぎてしまうと
根を支える骨がごっそりと溶けてしまうという事態になります。
この方は、ほっぺた側の歯ぐきが腫れるというのを繰り返しています。
この歯を使って行くための治療の術(すべ)がないことは以前よりご理解いただいていました。
腫れるのを繰り返すデメリットの方が多いことにも納得され、抜歯となりました。
周りの骨を溶かすこと以外のデメリットとはどんなものでしょうか?
全身的観点からみますと、慢性炎症が存在することにより血液検査データ(高感度CRPが高値)にも影響が及びます。せっかく炎症がないかの検査値がマスクされてしまうということになります。
さらに慢性炎症を引き起こしているバクテリアが血流を介して全身の臓器に到達します。歯周病菌が産生するTNFαという物質を介してインスリンの効きを悪くする(インスリン抵抗性)ということも考えられるでしょう。
インスリンを分泌しても血糖値が下がりづらいというのがインスリン抵抗性です。
インスリンを産生する膵臓(すいぞう)が疲弊(ひへい)して行く可能性があります。血糖コントロールが難しくなるので、糖化反応が進んで行くことも考えられます。
この話を始めるとどんどん広がって行くのでこれぐらいにしておきます。
さて、抜歯した直後です。
あえて、白黒写真にしております。
×5というのは5倍拡大視野の画像ですよ、という印です。
感染している部分を取り除くと同時にインプラント治療を行うという方法も存在しますが、今回はかなり大きな感染であったので状態が落ち着くのを4週間ほど待ちました。
表面の歯肉は治癒しています。しかし骨はかなり凹んでいます。
抜歯のタイミングがかなり遅くなったので、骨が溶けた状態が明らかになってきたともいえます。
さて、インプラント治療にとりかかります。
骨の大幅な造成が必要なケースです。
いざ、インプラント治療をしようとしたら骨がなくて困ってしまったというのは、
昔よくあったそうですが、いまはCTの画像で術前に把握できます。
予定どおり骨がないというだけです。
術前計画の一例です。
骨があるケースでインプラントを行うということの方が少ないので、
これぐらい骨がないのが普通のインプラント治療かもしれません。
顕微鏡下で上顎洞粘膜をやさしくはがしています。
やさしさをこういうところで発揮していますので、
普段はあまりやさしくないのかもしれません。(冗談ですよ)
所定の位置にインプラントを入れて、
骨の造成(ぞうせい)にとりかかります。
補填するための人工の骨と、遠心分離した血液を混ぜています。
膜を設置して、糸で固定しています。
この膜の取扱いは、慣れればさほど大変ではありませんが、
慣れないうちは時間がかかりすぎたりします。
これで処置はおしまいです。
4ヶ月後の状態です。
見えているのはインプラントの内面の部分です。
骨の造成した部分はどうなったでしょうか?
比べてみましょう。
骨がいびつに凹んでいると食べ物がそこに停滞したりします。
ふくらみがしっかりと維持できたと思います。
セラミック製の歯を取り付けます。
治療後のX線写真です。
この方は7本インプラントを使うことになりました。
現在は、安定しており今後歯が折れたりしない限り、追加のインプラントは必要ないでしょう。
このように、骨がない場合は骨を作る処置を併用してインプラント治療を行うことが可能です。
しかし、こういう処置よりももっと凄い処置があります。
それは、ご自分の歯を長期にわたって使えるようにするという方法です。
先手を打って長持ちさせることに投資をしていただければこういう処置はほとんど必要ありません。
定期検査や、メンテナンスをしっかりと受けていただき、食事を整えることが最も大切です。
それが一番大事〜というやつですよ。
それでは、
さいなら、
さいなら、
さいなら。。。