かわいそうな運命をもつ?おく歯の話
投稿日:2017年6月19日
カテゴリ:歯周病
まずはこの歯をご覧下さい。
6歳ではえてくる「おく歯」です。
多少黒くなっているところはありますが、
それほど汚れていません。
表面がつやつやしています。
次にこちらをご覧下さい。
さきほどご紹介した奥歯の
さらに1本うしろ
にある歯です。
この歯は、
11歳ごろ(女の子の場合)はえてきます。
さて、
この2本を
見比べてみましょう。
後者の方が
なんとなく汚れているように感じませんか?
そして、
黒い部分は、
前者よりも
濃く見えませんか?
さらによく見ると、
後者はすでに
「むし歯のつめもの」の跡があります。
つまり
一度「むし歯になってしまっている」こと
がわかります。
一方、
先にはえてきた6歳臼歯(最初の写真;前者)は、
まだ治療の跡(あと)はありません。
一般的には、
先にはえてきた方が
むし歯 になったり、
汚れていそうなものです。
でも、
現実には、
あとにはえてきた
おく歯 (後の写真)の方が、
すでにむし歯になり、
汚れています。
この両者の違いは
何だと思いますか?
↓
↓
↓
↓
ちょっと考えてみて下さい
↓
↓
↓
↓
↓
その違いは、
1 相手の歯とあたっているかどうか
2 セルフケア(おそうじ)できているかどうか
です。
まず、
「1 相手の歯とあたっているかどうか」
について解説します。
前者は
相手の歯とあたっている状態です。
「相手の歯と当たること」により、
こすり合わされ、
摩擦力のおかげで、
「歯垢(しこう)の付着が少ない」
状態です。
一方で、
後者は
まだ
生えかけで
途中の状態です。
実は、
歯肉から顔をすべて出すまでに、
もっとも時間がかかる歯です。
期間にして、
16から18ヶ月かけて
所定の位置まで
生えていきます。
つまり、
相手の歯とあたらない期間が
長いのです。
さらに、
2のセルフケアできているかどうか
の問題もからんできます。
自分で
生えかけなのか
どうなのか、
気づかないことが
あるのです。
それで、
ブラッシング(プラークコントロール)が
届いていないということが
往往にしてあります。
さらに、
この年代のお子さんは、
塾や
習い事が
かさなり、
とても忙しいことが
多いようです。
気をつけていないと、
食生活が乱れがちになり、
糖分をたくさん含んだ
飲み物や食べ物の
飲食回数が
増えてしまうかもしれません。
そして、
忙しいので、
痛くならない限り、
とても歯医者に行くような余裕は
ないかもしれません。
いかがでしょうか。
このおく歯にとって、
問題を起こしやすい条件が
たくさんそろっていることが
おわかりになりましたか?
ちなみに、
前者(第一大臼歯)は
14から18ヶ月ではえてきます。
時間がかかるのはほぼ同じですが、
親御さんの「仕上げみがき」 により
守られている 時期に
はえる歯です。
ご参考までに、
小臼歯の萌出は、
1から2ヶ月で完了します。
今回の内容は
以下の教科書↓の内容を引用しました。
Diagnosis and Risk Prediction of Dental Caries (Axelsson Series on Preventive Dentistry)
日本語版はこちら↓
う蝕の診断とリスク予測:実践編
この教科書にはさらにこう書かれています。
後者( 第二大臼歯)が
萌出(ほうしゅつ)する時期(11から14歳ぐらい)は、
「最もむし歯のリスクが高い時期である」。
下の表で示される
黒い部分が
「年齢のリスク」を表しています。
最もあぶない時期は、
1 11から14歳(第2大臼歯萌出開始と、小臼歯の萌出直後)
2 5−7歳(第1大臼歯萌出開始)
3 1−2歳(感染の窓)
と順位づけすることができます。
個人的な感想ですが、
1の時期が、
最も危ないのに、
放置されていることが
多いように感じます。
また、
この第二大臼歯のかみ合わせが
良くないと、
構造的に無理な力が発揮され、
顎の関節に問題を起こしはじめることが
あります。
この他にも
たくさんのリスク因子がありますので、
かかりつけの主治医とご相談の上、
予防にとりくまれることをお勧めします。
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